【MONUMENT】Liner Notes


バンドマスター 小林正家
1974年に発足した「MONDAYNIGHT JAZZ ORCH.」は今年で20年目を迎え、その記念としてここにCDを発表できる事は我々メンバーにとって大きな喜びであり、また誇りでもあります。これも皆様方のご支援のおかげとメンバー一同深く感謝しております。
思いかえせば、最初のLPではベイシーの曲のみの収録でありました。しかし、今回のCDでは、ここ6年間にわたりコーチをお願いしている新井さんの指導の影響もあり、幅広く多くのレパートリーに取り組んだ結果、多少欲張って(収録時間一杯に)様々なタイプの曲を取り上げてみました。このCDを通じて我々が20年間におよび蓄積してきたマンデイサウンドの片鱗を少しでも伝えることができれば幸いです。
私達は、今回のCD/MONUMENTを契機に、新たな気持ちでさらに10年,20年と演奏活動をしてまいりますので、より一層のご支援をお願い致します。
最後になりましたが、CD制作にご協力頂いた関係者の方々や、永きにわたり応援して下さった皆様に厚くお礼を申し上げます。


石原 康行
マンデイナイト・ジャズ・オーケストラのファースト・アルバム"BLUE & SENTIMENTAL"を日本最古のジャズ研究サークルのホット・クラブ・オブ・ジャパンの例会で聴かせて頂いてアマチュアバンドとは思えない実力を知る事が出来た。以来定期コンサートは毎回楽しみにしており、毎回企画性を持って実施されている努力は賞されていいだろう。
86年に発足した日本アマチュアビッグバンド協会(JABA)に加盟し、益々の技術向上は目を見張らせるものがあった。一度小生の関係する音楽(プロビッグバンドとジョイントのコンサート)に出演をお願いした折、プロミュージシャンが驚きマンデイナイトの演奏を高く評価したことは、バンドの高い水準を物語るものであろう。それは音楽を愛する一人一人の努力と、バンドクリニックを受け持ってくれている新井英治氏の適切な指導が大きな効果を表している事を忘れることは出来ない。
今回結成20周年を記念して自主制作されたこのアルバムは、これまでの演奏の集大成として楽しむことが出来る。カウント・ベイシーのサウンドをベースに新鮮なアイディアが加えられ、アンサンブルも良く、アマチュアに一番弱点となる各セクションのソロパートも前作より一層華やかなマンデイナイト・ジャズ・オーケストラの演奏は必ずや評壇の話題となろう。今後一層の発展を期待して止まない。


行田よしお
えらいもんだなぁー。 プロのビッグバンドが次々に姿を消し、とうとう日本にはレギュラーなビッグバンドが一つも無くなっちゃった。♯&♭やニューハード等の名門も、今やワンナイト・スタンド(仕事のたびに毎回メンバーを集める)のバンドとして、灯を絶やさぬ様にしているっていうのに、我らがマンデイは新しくレコーディングをしたっていうじゃないか。
もう、その熱意と努力と精進には頭が下がりっぱなし。言う事なし。えらい!。ノーベル賞か文化勲章をあげたい。それがダメなら菊花章でも天皇賞でもイイ。
長い間、司会者として生きてきたけど、アマチュアのビッグバンドでこんなに長くお付き合いが続いているのはマンデイだけになってしまった。まだ他にもたくさんの大学やアマチュアのコンサートで司会を頼まれてきたけれど、メンバーが転勤で解散してしまったのや、リーダーとメンバーがしっくりいかずにつぶれてしまったのや、マンネリ化、資金不足、練習場所が確保できない、ピアニストがどうしても見つからない等々、いろんな理由でリタイアしていっちゃうんだなぁ、これが。淋しい限りだぜ。
それだけに、マンデイとの一年に一回のお付き合いは、何にもまして嬉しい。涙ポロポロもんだぜ。
音はいいし、アンサンブルもいい、よくスイングするし、この呑ん兵衛楽団は僕の友達ばっかりだ。
今回のレコーディングだって、前回を上回る素晴らしい出来だ。
プロはマンデイを見習うべし!。


新井英治
"実に凄い"BANDである。
私はプロの音楽家として30年以上稼業しているが、このBANDのメンバーは、すでに20周年を迎えている。しかもメンバーチェンジが非常に少ない。プロのBIG BANDは2ケ月位のペースでメンバーチェンジがあり、その為中々思う様なサウンドにならない事が多く、同じBANDに20年在籍するPLAYERは皆無に等しい。しかし、このマンデイナイトはアマチュアだからこそ出来る事かも知れないが、それ程メンバーチェンジが無い。その為サウンドに一環したものを感じさせる。
私もこのBANDと一緒に音楽を作り始めて既に5年以上になる。春秋の合宿練習は、本当に楽しい。メンバー20年数年も付き合っていると"カミサン"以上で、当然学生の頃からまるで変わらない話し方なのだろうと思う。合宿や毎月曜日の練習の時など皆勝手に発言し、自分の言い分等ハッキリしている。他のメンバーはそれを聞く時、"また始まったか?"そんな風にサラッと受け流す。全く年長のキャリアか?本当の家族の様である。その中にちょっとだけ私が時々違う事を言う。最初は、私の意見は中々理解するのが難しい様だったが、その発言のタイミングがうまくなったせいか、割にすんなり受け入れてくれる様になった。何となくメンバーの一員に加えてもらった様な気がしてきている。
今回のレコーディングには、ディレクターとして参加したが、全く凄いBANDだと思った。私共プロは毎日練習しても中々上手くいかないが、このメンバーは週一回だけでこのプレイをキープしている。プロとは名ばかりの人に聴かせたい様な演奏である。このアルバムを御聴きになった時充分納得されると思う。2日にわたってレコーディングしたが、アマチュアの弱点であるスタジオプレー、それが全面に出ている演奏もある。当然最初の日は全員緊張の連続で思う様にいかず、何度もリハーサルを繰り返してレコーディングした。ところが2日目は前日とは打って変わって"一発本番"。はたして皆さんは曲ごとに初日か2日目か判断できますか?。




演奏曲目紹介

文:成田 正

SWINGIN' NIGHT
アルバム中唯一のオリジナル曲となるこのナンバーは、マンデイが以前からレコード・コピー等でお世話になっている作・編曲者でありトランペッターでもある岡野伸二さんの作品。ベイシー楽団のフィーリングを生かし、穏やかなアンサンブルを躍動させる展開は、なかなか素晴らしい完成度が聴けるもの。アルバム全体にもスムーズにとけ込んでいて、クレジットを見ないとオリジナル・ナンバーとは気づかないほどだ。
※藤原 寛(2nd Tp),木村喜明(Pf)


WHEN YOU'RE SMILING/君ほほえめば
マーク・フィッシャー,ジョー・グッドウィン,ラリー・シェイによって1929年に協作されたラブ・ソング。サッチモ,ビリー・ホリデイ,フランク・シナトラ等の歌唱が知られるほか、スイング全盛時代の定番的レパートリーとして多くのバンドに取り上げられていた。ここでは、バリトンの高橋さんがフィーチャーされ、スイートなラブ・ソングがスケール感豊かに描き出されている。
※高橋 仁(5thBs)


MOONLIGHT BECOMES YOU
1942年の映画「モロッコへの道」の主題歌で、ビング・クロスビーが歌ってヒットしたナンバー。名コンポーザー、ジミー・バン・ヒューゼンの作品だ。ハリージェームス楽団もその後ヒットバージョンを生み出したが、ここでのマンデイの演奏はカウント・ベイシー版。ベテラン・メンバーの村瀬さんの、渋く落ち着いたテナーがなかなか素晴らしい。
※村瀬彰吾(4th Td)


SHINY STOCKINGS
ニール・ヘフティと共にベイシー楽団のレパートリー充実に大きく寄与したフランク・フォスターが、1956年にベイシーに捧げたナンバー。これも確かマンデイの得意とする1曲で、リズムのグルーヴやアンサンブルなどがアルバム中でも出色の出来だ。
※木村喜明(pf),タカ(3rd Tp)


HALLELUJAH I LOVE HIM SO
レイチャールズが自作自演で1955年に発表したラブ・ソング。作者自身のアルバムの中では1958年にミルト・ジャクソンやケニー・バレルと録音した『ソウル・ミーティング』が有名だ。だが、ここでのバージョンはもちろんカウント・ベイシーとケイ・スターの『ハウ・アバウト・ジス』をもとにしており、アレンジはディック・ハイマン。山本さんの"乗り"の良い元気な歌唱が楽しめる。
※山本初枝(Vo),井関 弘(2nd Ts)


SISTER SADIE
93年に隠匿生活から第一線に復帰した、ファンキー・ピアノの代表格ホレス・シルバーの作品。オリジナルはシルバーの名作のひとつ『ブロー・イン・ザ・ブルース・アウエイ』に収録されているが、これを最近GRPオールスター・ビッグ・バンドがアルバムに収め、日本公演でも演奏、シルバー再認識の気運をグッと煽ったりした。ギターの青木さんの編曲は、たぶんこれをたたき台にしているようだが、シルバーのファンキーな雰囲気を上手く残しながら、マンデイ向きのスコアを完成したらしく、バンドは苦しそうだが生き生きとしていて心服させられる。
※福澤知成(1st tb),鈴木成章(3rd As),木村喜明(Pf)


YOU MADE ME LOVE YOU/恋のとりこに
1912年に作られ、翌13年のミュージカル『ハネムーン・エキスプレス』で主演のアル・ジョンスンが歌って話題をさらったそうだが、"器楽版"で初のヒットはハリー・ジェームス楽団による1941年の演奏(41年11月のチャートで5位にランク)。甘くムーディな楽想をさらりと演じてみせるセンスはやはりピカイチで、そのアレンジを踏襲したマンデイの演奏も、高橋さんが見事な吹奏を聴かせ、素晴らしい展開となっている。
※高橋守之(1st Tp)


JUST SQUEEZE ME
エラ・フィッツジェラルドやサラ・ボーンなど女性歌手の名唱で知られるデューク・エリントンのナンバー。ここで山本さんが選んだ素材は、阿川泰子の最新作『マイデューク』収録のバージョン。硬軟自在のムードで歌えるこの曲を、ここではミディアム・スローのテンポでソフトにまとめているので、リラックスして聴くことができる。山本さんの成長と同時に、マンデイも歌伴ビッグ・バンドとして洒落た雰囲気を出せるようになってきたようだ。
※山本初枝(Vo),井関 弘(2nd Ts)


TRUMPET BLUES
軽快で華やかなムードを持つハリージェイムスの作品。曲名が表す通りトランペット・セクションをフィーチュアしたブルースで、切れ味の良いアンサンブルが特徴だ。できれば、4人のトランペッターのソロも聴きたかった。
※Trumpet Soli:高橋守之(1st),藤原 寛(2nd),羽鳥隆弘(3rd),照木信久(4th)


THE DAYS OF WINE AND ROSES/酒とバラの日々
ジャズ・ファンに限らず、知らない人はいないだろうというくらい有名なヘンリー・マンシーニの代表曲の一つ。フランク・シナトラからオスカー・ピーターソンまあで歌にも器楽にも名演は数多いが、マンデイの吹奏は珍しいデューク・ピアソンのアルバムを元にしている。非常にダイナミクス豊かでメリハリのきいたアレンジを、丁寧にプレイしていて好感の持てる演奏だ。テナーの井関さんがフィーチャーされている。
※井関 弘(2nd Ts),福澤知成(1st Tb)


STELLA BY STARLIGHT/星影のステラ
1944年の映画『呪いの家』の主題歌としてビクター・ヤングが書いた佳曲。ビッグ・バンドによる器楽バージョンは数少なかったが、ジョージ・ベンソンが89年のアルバム『テンダリー』で取り上げた。ここでの演奏はその時のマーティ・ペイチの編曲をもとにしているが、ジョージ・ベンソンよりも流麗と言いたくなるような青木さんのギターが、素晴らしいソロを繰り広げている。青木さんは本当に会社で仕事をしているのだろうか?
※青木文尚(Guit),木村喜明(Pf)


AM I BLUE
1929年の同題アメリカ映画の主題歌で、スピード・ウェブ楽団をバックにエセル・ウォーターズが歌ってヒットしたもの。ビリー・ホリデイやレイ・チャールズ等が取り上げているが、最新のバージョンの中ではネルソン・リドルの編曲でリンダ・ロンシュタットが歌った『フォー・センチメンタル・リーズンズ』収録のものが話題になった。タイトルどおり悲恋の歌だが、山本さんの歌はどちらかというと明朗な感じだ。まぁ、この曲を本当にブルーに歌えたら、プロになるべきだろう。
※山本初枝(Vo),藤原 寛(2nd Tp)


A NIGHT IN TUNISIA/チュニジアの夜
サックスセクションのソリが印象的なこの曲は、ディジーガレスピーとフランクパパレリとで1944年に協作されたもので、アフロキューバンの代表作として有名。カルテットやクインテット規模のコンボからビッグバンドに至るまで、この曲程編成を選ばないものも珍しく、しかもボーカルバージョンにも名演(エラフィッツジェラルドやマンハッタントランスファー)があるなど、奏者にもリスナーにも人気が高い。しかし、決定版と言えばやはりアートブレイキーの同題のアルバムだ。マンデイの演奏も迫力いっぱいで聴き応えがある。
※藤原 寛(2nd Tp),井関 弘(2nd Ts),長島輝雄(Bass),平野嘉昭(Drs)


ONE O'CLOCK JUMP
1988年カウント・ベイシー作、楽団のテーマ曲として知られ、その後ベニーグッドマン、レスブラウン、デュークエリントン楽団など多数のバンドにも愛されたブルースナンバー。曲名をたずねられた時、深夜1時だったので"ワンオクロック・・・"になったという逸話もあまりにも有名。ベイシーナンバーには特別なこだわりを持つマンデイは、かねてからこのナンバーを演奏しているだけあって、アンサンブルにもソロにもこなれた落ち着きのある展開が聴け、アルバムの締めくくりにはぴったりだ。
※佐々木信(1st As),相原謙一(4th Tb),照木信久(4th Tp),小林正家(3rd Tb)


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